「俺の株式会社」は、料理人をはじめ全従業員の幸せを追求する会社です。
この事業を立ち上げるとき、日本の飲食業界を取り巻く機運の盛り上がりを日々実感しておりました。日本には、世界に冠たる料理人、いわば世界遺産ともいえる人たちが大勢います。
ところがいざ調査を始めてみると、調理学校を出た人たちが10年後も飲食業に携わっている確率は1割にも満たないということを知り、驚きました。
厨房の世界に魅力がない、将来の夢が見られない、そんな理由で人がどんどん辞めていくらしいのです。かたや飲食業界の顧客はというと、ファーストフードの台頭により、一流の料理人が作った幸せを実感できる美味しい料理を味わう人があまりにも少ないと気づき、日本の食文化の危機を感じました。
理想と現実のギャップがある。飲食業界の将来のために立ち上がらねばいけないと考えました。
私たちが生み出したビジネスモデルの骨子は、二つです。
ミシュラン星付き級の料理人が腕をふるい、高級店の3分の1の価格で提供すること。フード原価率60%超えでも、顧客を1日3回転以上させることで繁盛店の利益を実現すること。
もうひとつは、社員の成長(キャリアパスプラン)の構築。料理人が一人前になるのに10年かかると言われる業界で、当社は個別のプロ養成プログラムによりわずか2年で実現します。
すでに昨年の新卒は来年副料理長候補になっています。また、その先の社内起業やFCの指導や海外経験の制度を確立していきます。このビジネスモデルの出発点は2011年9月 第1号店、わずか16坪の「俺のイタリアン」(新橋本店)でした。
立ち飲み業態では、今の社会が忘れかけている「人との語らい」がもたらされます。肩すり寄せる距離の人たちと自然に会話が生まれて、なぜか親しくなっていく。そんな空間を提供することで、従業員は仕事に誇りが持て、幸せを実感できるのです。
「俺の株式会社」は社員の幸せのために立ち上がり、銀座で30店舗を展開、そしてニューヨーク進出を目指します。
俺の株式会社
創業者
名誉会長 坂本孝
1940年5月生まれ、山梨県甲府市出身。
カーウォッシャー、オーディオや中古ピアノ、化粧品の販売などいくつかの自営業を経て、1990年にブックオフを創業。
16年間で1000店舗まで拡大した。
2011年9月、東京・新橋に「俺のイタリアン」をオープン。
今、東京の銀座、新橋などで空前の繁盛現象を見せている業態の社長、坂本孝氏の手記。
「俺の○○」シリーズは、この3月15日にオープンした「俺の割烹 銀座本店」で14店舗になるが、それぞれ坪当たり月商70万~110万円あたりと飲食業の常識を超えている。
坂本氏はまず、この業態が誕生した背景と比類ない売上げを生み出す秘訣などを余すことなく公開。
また、坂本氏は「ブックオフ」の創業者でもあるが、ブックオフまでが「2勝10敗」という事業家の波乱に富んだ半生と、 事業家としてのあるべき道標を示してくれたという稲盛和夫氏の教えも述懐している。
読み進めるにつれて、タイトルにある「競争優位性」を創り出す坂本氏のチャレンジ精神に感銘を覚える。
出典:㈱商業界、月刊『飲食店経営』6月号掲載
内容紹介